プロジェクトステークホルダーマネジメント

プロジェクトステークホルダーマネジメントとは?

ステークホルダーとは、利害関係者という意味で、企業を取り巻くさまざまな人(従業員、取引先、地域住民など)のことです。

プロジェクトにおけるステークホルダーとは、プロジェクトを取り巻く関係者のことを指し、顧客や協力会社だけでなく、PMPL、プロジェクトメンバーなどがこれにあたります。そのため、プロジェクトを進める際には、多くの人員が関わってきます。

幅広いプロジェクト関係者と良好な関係を築いていくためにも、PMとして、プロジェクト管理が必須です。このステークホルダーとの関係を計画的に管理することを、プロジェクトステークホルダーマネジメントといいます。

プロジェクトステークホルダーマネジメントの実践の仕方とは?

では、実際に、プロジェクトステークホルダーマネジメントはどのようにしたらいいのでしょうか?

PMBOK(ピンボック)におけるステークホルダーマネジメントでは、プロジェクトの立ち上げから管理までプロセスに従って、実施していきます。具体的にどんなことをしたらいいのか、各プロセスに沿って詳しく見ていきましょう

①プロジェクト立ち上げ時に要素を洗い出す

まず、プロジェクトの関係者を洗い出して、ステークホルダーを特定していきます。具体的には、関係者一覧などを作成し、プロジェクトオーナーに確認しながら進めていきます。

プロジェクトの各進行タイミングで誰が関わってくるのか、ただ羅列するのではなく、役割も記載することで、全体像を正確に把握することが目的です。

抜け漏れがあると、重要な調整事項が後々追加となり、QCDへのリスクが増加しますので、業務/システムの観点で関係者を網羅できるよう、立ち上げ当初から十分に注意して進めるようにしてください。

計画を立てる

ステークホルダーに協力してもらえるようなマネジメント計画を立てていきます。その際に気を付けることは、「どのようなプロセスで進めていくかを計画できるかどうか」ということ。

そのためにも、どんなプロセスが発生するか、網羅的に把握することが大切です。

計画を実行する

作成したマネジメント計画を実行していきます。その時にステークホルダーと適切なコミュニケーションを図ることを心がけましょう。

適切なコミュニケーションとは、各プロセスに紐づけてステークホルダーに対し、「なぜ、いつまでにどんなことをしてほしいか」について過不足なく説明したうえで、プロジェクトに前向きに協力して頂くための意見や懸念事項を引き出すためのコミュニケーションのことです。

統合的に管理・監視する

最後に全体像ができあがったら、マネジメント計画の実施状況を監視していきます。

最初に取り決めた計画やルールが守られているかチェックし、想定していた計画からズレた場合は、柔軟かつ臨機応変に対応しましょう。ただし、当初計画に固執することが目的ではなく、あくまでも「プロジェクト本来の目的が達成できているか」という観点で、調整を行うことが重要です。

まとめ

プロジェクトステークホルダーマネジメントは、人数が多くなればなるほど、当然ながら難易度は高くなります。「誰がいつどのように」プロジェクトに関わるのかの洗い出しと、役割設計、実施計画をしっかり立てたうえで、プロジェクト本来の目的が達成できるよう、クライアント任せにするのではなく、あるべき方向へ導くのが、PMとしての最重要な役割であることを忘れないでください。

プロジェクト統合マネジメント

プロジェクト統合マネジメントとは?

PMBOK(ピンボック)が定めている10の知識エリアの中で、統合マネジメントは他の9つの知識エリア全体を統合してマネジメントします。

プロジェクト統合マネジメントの統合とは、インテグレーション(Integration)のことです。
つまり、全体のコーディネーションをプロジェクトマネジメントの中心で行ったり取りまとめたりするプロセス群になります。

プロジェクトマネジメントチームPMOチームは、この統合マネジメントを中心にプロジェクトをマネジメントしていきます。
具体的には、 他の知識エリアのマネジメントがしっかりなされているかの進捗管理課題管理変更管理ステータスレポートも含めて、統合マネジメントを行っていきます。

プロジェクト統合マネジメントの実践の仕方とは?

PMBOKにおけるプロジェクト統合マネジメントでは、立ち上げから終結までのプロセスに従って実施していきます。
プロジェクト統合マネジメントの各プロセスでは、どのような作業をしていけばいいのか、詳しく見ていきましょう

①プロジェクトを立ち上げる

プロジェクトを立ち上げる際には、プロジェクト憲章を作成します。
プロジェクトチャーターとも呼びます)

プロジェクト憲章とは、プロジェクトを公式に立ち上げるための文書のことです。
プロジェクトの内容が記述された文書で、キックオフで関係者の意思統一を図るためにも使用されています。
具体的には、プロジェクトの目的測定可能な目標前提条件制約条件マイルストーンスケジュール予算リスクPMの名前責任範囲を記載します。
文章量は、プロジェクトの規模によっても異なりますが、A4 1枚でおさまるものもあれば、10ページに渡るものまでさまざまです。

プロジェクトの計画を立てる

次にプロジェクトマネジメント計画書を作成します。
ここでは、プロジェクトの目標、およびそれを達成するための方法を記述していきます。プロジェクトマネジメント計画書は、プロジェクトマネジメントの意思決定の基準となっていくものになります。
この計画書に基づいて、プロジェクトの実行監視コントロール終結、すべてのプロジェクトマネジメント活動が行われていきます。

プロジェクトを実行する

プロジェクト実行の指揮をとっていきます。
プロジェクトの目標を達成するために、もろもろのタスク成果物作成などをマネジメントや変更管理を実施していきます。
この時に大事なのは臨機応変に対応するということです。
実行していく中で、もともとの予定とズレた時に調整していくための対応力が必要となります。

プロジェクトの管理・監視をする

そして、プロジェクト作業を管理し、監視しながら、コントロールをしていきます。
プロジェクトが計画通りに進んでいるかを監視し、必要に応じて対応策を行い、プロジェクト全体へ定期報告します。
必要に応じて統合変更管理を行い、プロジェクトの進行に滞りがないようにしていきましょう。

基本的には、プロジェクト計画で決められた手順でプロジェクトが進むように促し、変更要求を確認し、採用の諾否を意思決定していきますが、状況が変化することで前提が変化していくものなので、あまり当初計画に固執し過ぎず、「なぜ、何が起こっているのか」を把握し、「どうしたらよいか」について、現場の混乱を最小限に抑えつつ、修正をかけていくことも重要です。

プロジェクトを終わらせる

プロジェクトを終結させる際には、プロジェクトの成果物を確認し、完了条件を満たしているか判定し、しかるべき部署に引き渡します。
そしてプロジェクトを終結させ、最終報告を上げて終了となります。

まとめ

プロジェクト統合マネジメントは、プロジェクトの目的を果たすために、重要なものです。

各知識エリアはプロジェクト上で密接に関わり合っているため、バランスよく統合することが必要になります。
その際基準となるのは、顧客の求めるQCDのバランスです。
何か問題が起こった時には、その基準に立ち返って判断するよう、PMはプロジェクト全体をリードする必要があります。

達成すべきなのは、あくまで「目的」であって顧客の求める「到達点」です。「計画通り」進めることも重要ですが、目的を達成できているか?という観点を常に見失わないよう、気をつけてください。

プロジェクト調達マネジメント

プロジェクト調達マネジメントとは?

プロジェクト調達マネジメントは、プロジェクトマネジメントの手法を体系立ててまとめたPMBOKの一領域で、「必要なプロダクト、サービス、あるいは所産をプロジェクト・チームの外部から購入または取得するために必要なプロセスからなる」(PMBOK 第6版 P.24)とされています。

いわゆる調達管理のことです。実際に使われるケースとしては、協力会社要員開発ツールなどの調達(購入や契約)が多いです。

調達マネジメントの基礎となる3つの各プロセス群を見ていきましょう。

プロジェクト調達マネジメントの各プロセス

① 調達マネジメントの計画

マネジメント領域の他のプロセスのマネジメント方法や進め方を定義し、文書化し、プロジェクトマネジメント計画書補助計画書を作成していきます。
計画書を見ながら、外部調達するかどうかを検討し(内外製決定)、調達が必要な場合は、いつ何をどれだけ、どのように調達するのかを検討しましょう。
必要に応じて入札文書や発注先選定基準を作成し、納入候補を特定していきます。調達マネジメント計画書入札文書発注先選定基準を作成しておくと良いでしょう。

② 調達の実行

次に、納入候補から回答を得て、発注先選定基準をもとに納入者を選定し、契約を締結します。

③ 調達のコントロール

調達先との関係をマネジメントしていきます。
契約している内容どおりに責任を果たし、権利が保護されていることを確実に行いましょう。
最終的に問題が無ければ契約を終結します。

実践で活用していくには?

プロジェクト調達マネジメントを実践していくにあたり、そもそも調達管理の目的は、最適な納入者を選定することです。

調達管理では、計画段階で作成したRFPを候補先企業に配布するため説明会を実施します。そのあと提案を受けます。
この提案を受けるプロセスを納入者回答依頼プロセスと言います。そして提案書が集まったら、そこから最適な納入者を選定します。
これを納入者選定プロセスと言います。

プロジェクト調達マネジメントは、進捗管理やコストマネジメントなどと違い、問題管理ではなくリスク管理(つまり契約)が何よりも大事なのです。問題を可能な限り未然に防ぎ、問題が起きた時の対処方法を予め決めておくことが、契約締結のうえでの重要ポイントです。

契約を結ぶ際の留意点としては大きく三つです。
1. プロジェクト目的を達成できる選択であること
2. 客観的に見て納得できる評価になること
3. 責任の所在だけではなく、問題解決のプロセスを明確にすること

説明会と納入先選定

説明会と納入先の選定について、もう少し具体的に見ていきましょう。

計画段階で作成したRFQまたはRFP説明会を開催していきます。
説明会は、入札ベンダコントラクターなどさまざまな名称があります。
要件に合いそうな企業を複数選定し、説明会への参加を促し、説明会を開催します。
この時、気をつけなければならないのは、すべての企業に対して平等であること。同じ情報を伝えないと、後の選択の時に見誤るからです。

次に納入先の選定
説明会が終わり、各社からの質問に対応したら、各社から提案書が提出されます。
提案書を比較検討し、本プロジェクトに最適な納入者を決定していきます。
具体的には、評価方法契約交渉で決めていきます。
そのためにも事前に決めた評価項目、評価基準、重み付けをもとに評価し、客観性を持たせるように定量化する。

そのあと、リスク分析をして、対策の有効性を評価し、提案内容に虚偽や過大評価がないかどうかを見極めるために現地視察をするなどして最終的に判断していきましょう。
決定する際には、公正明大で誰が見ても納得できる評価をするのが理想ですが、少なくとも客観的に「なぜこの調達先を選定したのか」の判断基準を明確にすることが重要です。
その判断基準は、発注先が「何をどのくらい重視するのか」によって決まります。
うまくいかない時の責任を委託先へ押し付けるといった依存心を排除し、主体的に取り組む姿勢が何より重要であることを忘れないでください。

まとめ

プロジェクト調達マネジメントは、最適な納入者を選定することが目的なので、調達計画を具体で作成し、説明会、納入先選定を的確に行うことが大切になります。
客観的に見て納得できる判断基準を予め作れるようにしておきましょう。

プロジェクトコストマネジメント

プロジェクトコストマネジメントとは?

プロジェクトコストマネジメントは、プロジェクトマネジメントの手法を体系立ててまとめたPMBOKの一領域で、「プロジェクトを承認済みの予算内で完了するためのコストの計画、見積もり、予算化、資金調達、財源確保、マネジメント、およびコントロールを行うためのプロセスからなる」(PMBOK 第6版 P.24)とされています。
つまり、プロジェクトコストマネジメントとは、計画した予算を守るための一連の費用管理のことです。

PMとして納期を守ることはもちろんのこと、QCD(Quallity:品質・Cost:費用・Delivery:納期)のバランスを見ながら予算調整を行っていくことも重要な任務の一つです。
プロジェクトの工期を短縮させるために、人員や資金を計画当初の予定(クリティカルパス)より多く投入するクラッシングという方法でコストをかければ納期は挽回できますが、予算を超えてしまったら挽回することは難しくなります。
そのためにも、予算を超えるかもしれないという兆候をいかに察することができるかが大切になります。
まずは、プロジェクトコストマネジメントの基礎となる、各プロセス群を見ていきましょう。

プロジェクトコストマネジメントの各プロセス

プロジェクトコストマネジメントを実施するにあたり、下記プロセスで行っていくといいでしょう。

1.コストマネジメントの計画

プロジェクトマネジメント計画書の補助計画書として、コストマネジメント計画書を作成します。
プロジェクトスケジュールマネジメントでも作成したWBSに基づき、作業タスク毎に人員をどのタイミングで何人登用して、いくらかかるかを、見積もりを算出していきましょう。詳しくはスケジュールマネジメントの記事をご参照ください。

2.コストマネジメントの見積もり

スコープマネジメントのアウトプットであるスコープ・ベースライン(プロジェクト・スコープ記述書、WBSなど)に要員計画などを加味して、プロジェクト・コストを見積もります。
プロセスは作業タスクで発生する資源の見積もりプロセスと強い関連性を持ちます。コストの見積もりと、見積もりの根拠を探っていきましょう。
委託先から受領した見積もりをチェックする際には、きちんと見積もり根拠を明らかにしてもらい、不明確な部分リスクを感じる部分について、事前に協議し、問題が発生した際に定点観測ができるよう、課題管理しておきましょう。

3.予算の設定

コストの見積もりプロセスで策定された見積もりとスケジュールを使って、コスト・ベースラインを作成してきましょう。どの費用がいつ、どれくらい消費されるのかを時系列に具体的に配分していきます。
このコスト・ベースラインをもとに、いくつかマイルストーンとして「チェックポイント」を設け、コストのコントロールを行っていきます。

4.コストのコントロール

そして、コスト・ベースラインと実績報告を比較して差異をチェックし、問題が発生していれば、原因を追究して改善を図っていきます。
統合管理プロセスに、必要に応じて変更要求を出してコストに対する変更をコントロールしていきましょう。

実践で活用していくには?

ここまで、コストマネジメントの基礎となる各プロセス群を見てきました。
そもそも費用管理の目的は、費用を計画範囲(予算)内に収めることです。限られた予算の中で、いかにその場の変化に合わせて調整していくかが肝となります。予算超過をタイムリに検知するには、計画段階で作成したベースライン(時系列に配布された予算)と実際に要した費用を把握することです。
そのツールとして、工数予定実績表EVT(Earned Value Technique:アーンドバリュー技法)を用いることが多いです。その際に気をつける点は以下の5点です。

  1. 予算超過のケースを想定し、事前に手を打つ(予防的対策を行う)
  2. 予算超過の兆候を管理する
  3. 予算超過をできるだけ早く検知する
  4. 多くの対応策を持っておく
  5. 予め余力がどれくらいあるか、定点観測をしユーザーとのスコープ調整の根拠として提示できるようにする

予算執行表などの管理帳票で把握しておくのもいいでしょう。直接または進捗会議にて、報告を受けるようにすることも重要です。

まとめ

PMとして納期を守ることと同等に、予算内でコスト調整をすることが大事ですが、赤字プロジェクト量産のケースが生み出されるのは、そもそものあるべきプロセスで行えていないからです。
あるべきプロセスとは、QCDのバランスで決めていくということです。つまり、PMとして求められるのは、プロジェクト全体も細部も見渡せる存在として、QCDのバランスを見ながら、進捗管理で随時状況を把握し、予算超過になりそうな兆しにいち早く気づき対策を打つコストマネジメントができることなのです。
顧客は基本的に「最高のQCD」しか求めません。
しかし、そんなものは幻想です。
限られた資源で顧客要望をいかに実現するかが、PMに求められる手腕です。PMは顧客の夢を叶える「プロデューサー」であると同時に、究極の「現実主義者」でなくてはいけません。
そのためにも、QCDのバランスを常に把握し、顧客へ提言できる状態をつくることで、「言いなり」になることを防ぎ、プロジェクト全体をコントロールすることにつながることを忘れないでください。

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