プロジェクトスケジュールマネジメント

プロジェクトスケジュールマネジメントとは?

プロジェクトスケジュールマネジメントは、プロジェクトマネジメントの手法を体系立ててまとめたPMBOKの一領域で、「プロジェクトを所定の時期に完了するようにマネジメントする上で必要なプロセスからなる」(PMBOK 第6版 P.24)とされています。

一言でまとめると、プロジェクトスケジュールマネジメントとは、進捗管理のことです。

プロジェクトを進めるうえで、タスクがどのように進行し、何が滞っていて、どう対策を打っていくかは重要なプロセスになります。
PMに求められるのは、進捗状況が「どうなっているか」ではなく、「どう対策を打っていくか」をいかにリアルタイムで判断できるかです。
ここでは、進捗管理の基礎となる各プロセス群を見ていきましょう。

プロジェクトスケジュールマネジメントの各プロセス

プロジェクトスケジュールマネジメントを実行する上で、下記の6つのプロセスは最低限抑えておきましょう。

1.スケジュールマネジメントの計画

マネジメント領域の他のプロセスのマネジメント方法や進め方を定義し文書化し、プロジェクトマネジメント計画書の補助計画書を作成します。
プロジェクトマネジメント計画書とは、プロジェクトを管理するために、進捗状況やタスクをまとめた計画書のことです。その工程のひとつとして、スケジュールを管理するために、スケジュールマネジメント計画書へ落とし込んでいきましょう。
実業務では、プロジェクト計画書の一つの章として、スケジュールに対する考え方をまとめ、マスタスケジュールを作成し他のサブシステム含め共有・更新していくのが一般的です。

2.作業タスクの定義

WBSシートを使用し、作業タスクを細分化していきます。WBSとはWork Breakdown Structureの略で、作業分解図のことです。
プロジェクトを遂行するにあたり、どのフェーズで何のタスクが発生し、担当は誰で、いつまでが期限なのかを俯瞰してわかるようにまとめていきます。
その際に、スケジュール管理に適した作業単位に、タスクを細分化していきましょう。
作業タスクはスケジュールの管理単位になるだけではなく、見積もりの単位にもなります。
作業タスクリストを作成して、随時チェックしていくといいでしょう。

ここで重要なのは、MECE(ヌケモレなくダブりなく)です。作業全体を俯瞰して要素分解し、そこから個々のタスクを洗い出していきましょう。タスクのヌケモレは遅延リスクに直結します。
加えて、新たに発生したタスクは全て追記し常に更新することが、スケジュール遅延リスクを低減する王道です。メンバーには「WBSに記載していないタスクを実施していないか」都度確認し、遅延が発生している場合はどの部分が問題となっているか、リアルタイムに点検できる状態を保つよう心掛けましょう。

3.作業タスクの順序設定

各作業タスクの順序(依存関係)を考えましょう。
作業タスクの中には設計書ができないとプログラミングが開始できないように、先行するタスクが終了しないと開始できないといった依存関係があります。
作業の前後関係を明確にし、WBSに落とし込んで、作業タスクの優先順位とクリティカルパスを見極めましょう。
クリティカルパスとは、「重大な経路」と直訳されますが、要は「最長経路」のことです。
どんなに短縮してもそれ以上短縮できない作業経路は何か把握しておくことで、重要なマイルストーンまでに作業が完了するか、どのタスクが遅延すると遅延リスクが高まるか、などの判断基準となります。

4.作業タスクの所要期間の見積もり

各作業タスクを完了するために必要な期間を見積もります。プロジェクトの特徴に応じて、三点見積もり(最頻値、楽観値、悲観値の値を用いて推定する方法のこと)を使ったり、簡易的に類推見積もりを使ったりします。それにより、所要期間見積もり・見積もりの根拠を探っていきます。
重要なのは見積もりの方法ではなく、「見積もり根拠」です。基本的には十分なバッファを設けた「悲観的な数値」をもとに算定することで、遅延リスクを予め低減することができます。

5.スケジュールの作成

そして、いよいよ、これまでの作業に、組織要員計画作成の段階で考慮する資源平準化(山積み・山崩し)などを加味して、スケジュールを作成していきます。
以後、タイムマネジメントのベースラインになり、進捗が順調か遅れているかの判断材料になっていきます。ここまでの説明で、タスクと作業工数の洗い出しがこのベースラインに直結し、その精度が遅延リスクを左右することがお分かり頂けたと思います。

6.スケジュールのコントロール

最後にスケジュール・ベースラインと実績報告を比較して差異をチェックし、問題が発生していれば、原因を追求し改善を図っていきます。統合変更管理プロセスの一部として、スケジュールに対して発生した変更を実際に行っていきましょう。

実践で活用していくには?

ここまで、各プロセスを見ていきましたが、そもそも進捗管理の目的は、納期を守ることです。
限られた納期の中で、残っている業務をどう対処するかを管理するもので、これまでの業務を振り返るものではありません。そのため、下記3点に気をつけていきましょう。

  1. 進捗遅れの兆候をいち早く掴み、事前に手を打ち、リスクを低減する
  2. 可能な限り早く問題を検知し、迅速に対策を検討する
  3. 多くの対応策を持っておき、事後対策ができるようにする

進捗遅延の早期発見をするためには、進捗管理表、完了状況確認表、工程管理表などを使い、予定と実績の差から遅れを検知していきます。
また、定量的指標として、マスタスケジュール(ガントチャート、マイルストーンチャート)、各種ドキュメント(操作説明書、外部設計書など)などを活用しましょう。

また、進捗会議の場を設けて、予定と実績の差異を知ることはもちろん、チームの状態や雰囲気・モチベーションを把握することも大事。その場の状況に合わせて、変化に柔軟に対応していけるようにしましょう。

まとめ

スケジュールマネジメントと聞くと、忠実にスケジュールに沿っていくようにタスクを行っていけるようにしていくことだと思いがちですが、日々変化する状況に対して、いかに変化に強く、迅速かつ適切な判断ができるかがPMとして求められる素質になります。
業務全体を調整する、いわばプロデューサーのような役目を担うのがPMなのです。その意識を持って、実行していくといいでしょう。

日本人は失敗を嫌う傾向が強いですが、失敗を恐れ「管理のための管理」にならぬよう、「できない言い訳」のためではなく「どうやったらできるか」を考えることが、PMに重要な考え方ですので、常に「前向きに」チームをリードしていく「マインド」を持つことが大前提であることを忘れないでください。

プロジェクトリスクマネジメント

プロジェクトリスクマネジメントとは?

プロジェクトがうまくいくか、いかないかは、リスクマネジメントができているかによっても変わってきます。プロジェクトにはさまざまなリスクが存在し、それらのリスクをどのように適切に処理できるかが問われます。
PMBOK(ピンボック)では、「プロジェクトに関するリスク・マネジメント計画、特定、分析、対応計画、対応処理の実行、およびリスクの監視を実施するプロセスからなる。」と定義されています。
つまり、プロジェクトリスクマネジメントとは、プロジェクトにおいて起こりうるリスクを、予め影響範囲の大小を見極めて、マネジメントをすることです。

ここで、リスクについて整理しておきましょう。
リスクには、純粋リスク投機的リスクと、大きく分けて二つあります。
まず、純粋リスクとは、コンピュータ障害など、純粋に損失のみが発生する可能性のことを指します。
そして投機的リスクとは、株式投機など利益と損失の両方の可能性のこと。
リスク・マネジメントでといえば、純粋リスクのみを想定しがちですが、PMBOKでは投機的リスクも含めて、リスクマネジメントするように明記されています。

リスクマネジメントの規格

リスクマネジメントには関連した国際規格および国内企画があります。

(1)ISO 31000:2009(国際規格)/JIS Q 3100:2010(国内規格)

リスクマネジメントに関する原則及び一般的な指針をまとめたもの。ISO31000の最新版は2018年版ですが、まだJIS規格には反映されていない(2018年本記事執筆時)

(2)I SO Guide73:2009(国際規格)/JIS Q 0073:2010(国内規格)

リスクマネジメントの用語を定義した規格

(3)IEC/ISO 31010:2012(国際規格)/JIS Q 31010:2012(国内規格)

リスクアセスメント技法に関する規格。略称IEC31010。dual logoの場合は、IEC/ISO31010

これらの規格は、これまで経営やプロジェクト管理、セキュリティなどさまざまな分野で独自の発展を続けてきたリスクマネジメントに対して、すべてのマネジメントに適用できるプロセス、そしてフレームワークを提供するものです。
つまり、リスクマネジメントに関する知識を身につけておけば、企業経営や情報セキュリティ分野でも知識を生かすことができます。

リスクマネジメントの定量的ツール

リスクマネジメントのやり方についてですが、詳細について語ると膨大な量になるため、概要だけお伝えします。
まず、「感度分析」「期待金額価値分析」「デシジョンツリー分析」など、定量的リスク分析で使用するツールについてです。

感度分析

感度分析とは、複数あるリスクのうち、どのリスクがプロジェクトに与える影響が最も大きいかを見る分析手法です。
どのリスクを重点的に管理するのか、優先順位をつける際に使われるものです。

期待金額価値分析

EMV=Expected Money Value分析のことで、確率論の「期待値」を使った分析手法が、期待金額価値分析と言います。
あるリスクに対して、起こりうる結果が複数ある場合に、それぞれの結果がもたらす期待と、それと同時にその結果になる確率をそれぞれ求めて、乗じて、合算した総和を求めるとできます。

デシジョンツリー分析

あるリスクに対して複数の対応策や選択肢があるときに、個々の選択肢のコスト、リスクの発生確率、発生した時の結果を算出します。
そして個々の選択肢のEMVも求めることができます。
このように作成したデシジョンツリー図を用いて行う分析手法が、デシジョンツリー分析です。

全体像を把握することがカギ

とはいえ、リスクマネジメントとは、具体的に動けるためにも、プロジェクトのプロセスとして全体像を把握しておくことがカギとなります。

プロジェクト計画時には、各工程における発生しうるリスクとその影響範囲について整理をし、考えられる対策を打てるようにしておくこと。
そしてプロジェクト実施時には、設定したリスクをしっかり監視し、発生したら計画通りに行うこと。

ただ、PMに求められる資質は、何よりも想定外のリスクが発生した場合でも、冷静に正しく柔軟な「変化に強い対応」が臨機応変にできるかどうかです。
そのための判断軸として、影響範囲の見極めが重要となります。リスクは予め対処すれば、問題が拡大せず影響範囲を最小限に留めることができます。
何かを取捨選択しなければならない場合には、この影響範囲という軸で判断するような視点を普段から持つようにしましょう。